こたつの中

昼間ひょいとこたつをのぞくと猫がゐる。普段はまるでつっけんどんで、やけにみゃあみゃあ言ってゐやがると見れば腹をすかしている、あの妙によそよそしい猫である。それでも本心では少しは人間に親しみたい気持ちもあるとみえて、夜半、布団の足元に居住まいを正して黙って座ってゐるので、私も名前を呼んでみたり手をひらひらさせてみたりするのだが、一向布団に潜って気配はない。
こたつの中でくぅくぅと寝息を立てて眠ってゐるのを見て、そうだ子供は親の匂いを覚えてゐて随分離れてゐたって再会するとすぐに自分の親とわかるという新聞記事を思い出し、今の間に頭を撫でて一つ私の匂いをすっかりこいつに覚えさせてやらうと思い、私はこたつに潜り込んで手を伸ばした。頭は掌にすっぽり収まるほどに小さく、頭蓋骨もさぞや薄かろうという儚さだが、私の撫でるのに合わせて頭をゆらゆらさせてゐる姿はなんとも愛らしい。どれ、寝顔をようく見てやろうと顔を近づけると、猫はうっすら目を開いて、不揃いの犬歯を振り立てて私を威嚇した。

なんだい。気取ってゐやがる。