王様、ハゲを流血させる

昨夜のこと、いつものように余が椅子でふがふがしておったら、家臣がやってきて余をなでなでし始めた。と、家臣はなでなでの手を止めたばかりか、その手をわなわな震わせたかと思うと、息を殺して、けれども決してその緊張感を悟られまいと片手では同じリズムでなでなでを再開し、もう片方の手でもって慎重かつ大胆に余の首筋の毛を分け分けした。



「…王様!ハゲに血が!」



パリ脱出に失敗してベルサイユに戻ったアントワネットの髪に驚く侍女のように、家臣は青ざめた。



余の首にちいっさなちっさなハゲが出来ていて、血が滲んでいたのだって。実家の猫にアレルギー皮膚炎を煩って、よくおなじようなのを作っていた子がいて、それを治せなかったのを家臣はとても悔やんでいるので、もうすっかり「きゃー」とばかりに動転したらしいのだ。
でも病院で診てもらってお薬ももらって、さほど大したことはないとわかって、余も家臣も一安心なのだ。ふぅ、やれやれ。



ん?ハゲの写真?



そんなの撮らせないのだ!