王様、嬉しくてもちもちする

もちもちのみならず、鼻をくんくんして、おつむをほりほりされました。



昨日はお仏壇のヒトの命日だったのだ。それで、今日は皇太后、黒伯爵、黒貴婦人が来て、家臣と一緒にごちそうを食べて、ビールを飲んでいたのだ。それでね、それでだけど…。

ごまふくは、まだお外が怖くて、だからお外からヒトが来るのも怖くて、中でも黒貴婦…げふげふ…特に怖いヒトがおるのだって。だから、今日もお客さんが家に来た時にはおこたに立て篭っておったのだ。
でも、ごまふくがおこたにいることなんかバレバレなの。繰り返し繰り返し黒伯爵や“あの”黒貴婦人がおこた布団をめくってはごまふくをのぞき込んで「ぷぷぷっw」「ふくくくっw」って笑ったのだ。それでも、ごまふくはおこたの中で透明猫になったふりをしていたけど、黒伯爵がおこたに足先をほんのちょっと入れたら、びくぅっ!って中でおろおろしちゃって、それを黒貴婦人が見つけて「ここでもぞもぞしている!」って言ったものだから、ごまふく、もう限界だったんだって。それで、ぶわ〜〜〜って飛び出して、ぐわ〜〜〜って逃げようとしたら廊下に黒貴婦人がいて行く手を阻んだ上に、和室への襖もぴしりと閉めたもんだから、ごまふくはもう、「ごまふく、とりになろう とりになって おそらへにげよう」と思ったのだ。つまり、ガラス窓を垂直に駆け上ったの。もちろん、ごまふくは鳥にはなれないのだ。
垂直にガラス窓を駆け上り、そのままのスピードで駆け下り、爪を出しっぱなしでフローリングの上を横滑りに滑って、壁にぶつかって、戻って、また垂直にガラス窓を駆け上がって、家臣が廊下のドアを開けてくれて居間からは脱出したんだけど、黒貴婦人に追われて洋室に飛び込んで、再びガラス窓を駆け上がって、今回はもうガラス窓を駆け上がっては下り、駆け上がっては下り、駆け上がっては下りで。
ついに「このままでは、ごまふくの一念岩をも通すで、何か奇跡が起きてしまうかもしれん」と思った貴婦人が家臣を呼んで、家臣に逃がしてもらって、ようやく他の場所に立て篭ることができたのだ。
今も内緒の場所に立て篭っておるよ。ごまふく、弱虫なのだ。
でも、もうそろそろおこたに戻ってきてもいいのに。今日は余は怒ったりしないよ。