王様、一部始終を語る 其の弐

翌朝、ごまふくはごはんを食べたがって、すんすん余にひっついたり家臣を見つめたりしておった。
とっても大人しくよいこにしておったので、家臣はこれなら朝の仕事から帰ってから捕獲して
病院へ連れて行けると踏んだのだ。昨夜までは朝一で捕まえてハードキャリーに入れておくつもりだった
らしいが、こんなによいこなら、そんな可哀想なことは止しましょうと思ったらしい。
そして仕事へ行って帰ってきたら、ごまふくは完璧な警戒&臨戦態勢でおこたに立て籠っておった。
ふーとも言わずに籠っておった。全身の毛を逆立てて籠っておった。
それから家臣は知らん顔をしてみたり、ごはんを盛ったお皿を叩いてみたり、いろいろの工夫を
したのだったが、一度逃げると決めた猫の警戒を解くのは無理なのだ。家臣は色々考えた。
日にちを繰り延べて、今日中に捕獲して入院、明日手術とか…でもなぁ…。そしてついに決断したのだ。
100均で買った園芸ネットを両手で掲げ、ごまふくを洋室に追い込み、バターになるほど部屋の中を走り回るごまふくを徐々に部屋の隅に追いつめると、空気清浄機もスピーカーもモノともせず、カーテンごと
ごまふくを引っ掴み、天に昇るがごとくぴちぴちと、もりもりと身体をのけぞるごまふくを、熟練した
うなぎ漁師のようにキャリーに押し込んだのだった。その間のごまふくの叫び声ったらなかった。
でも、一歩家を出ると内弁慶ごまふくは間違えてキャリーに入っている虎柄のストールみたいなふりで
もううんともすんとも言わずに病院へ連れられていったらしいのだ。





      \ つづくのだ /



引き続き、かわいいふりをするごまふくをお楽しみください